編み機とハタラク職人のモノ語り
連載企画 第八回目、ずいぶん間が空いてしまいました、、、。
さて今回は「Hoffmann」の商品企画担当者にインタビュー!
Hoffmann(ホフマン)弊社自ら企画し、生産する靴下ブランド。Hoffmannは通年でご購入頂ける定番商品と、春夏・秋冬(2期展開)限定商品があり、23AW商品出荷に向け靴下工場は大忙しです。
ホフマンは東京支店の従業員が企画デザインを担当しています。半年に1度は広陵町の靴下工場で企画会議を行いますが、生産現場と離れた環境での業務は本社従業員たちとの連携が不可欠。
そんな状況下で毎シーズン、約30型ほどをシーズンごとに変わるテーマに沿って企画していきます。
ー 靴下の商品企画で一番苦労したことは?
デザイナー:完成イメージをチーム全員と共有することの難しさを日々感じています。企画者である私の頭の中にあるイメージを現実の靴下へと形にしていくわけですが、実際に編み機をセッティングして操作するのは私ではなく、東京から遠く離れた奈良の職人さん。さらに私と職人さんの間にもう一人サンプル作成の進行を管理する担当者が入るので、伝言ゲームのようにならないよう企画書はできるだけ詳しく指示を書くよう心がけています。
上がったサンプルを確認後、修正指示で企画書が埋め尽くされることもあり、細かいことを言う人だと思われているかと考えたりすることもありますが、その先にいるHoffmannを選んでくださる方々のためにも妥協できないところだと思い取り組んでいます。最近では職人さんとのミーティングの機会も増え、企画のすり合わせもスムーズになってきています。
糸見本帳や過去商品の仕上がりを参考に配色していきます。糸の素材や種類によって色あいが異なるため、限られた糸の中でカラーをイメージしながら選びます。
ー シーズンテーマにちなみ、遊び心のある商品もあり、私たち従業員も毎回とても楽しみにしています。どのようなシーンで思い浮かぶものなのでしょうか?また、シーズン商品の一番重要視していることやこだわりなどはありますか?
デザイナー:「シーズンテーマ」と「シーズンを象徴する靴下の柄」は同時に考えています。良さそうなテーマが思い浮かんでも、それを表現する柄を想像できなければ違うテーマを探します。アイデアが浮かぶタイミングは散歩など歩いている時が多いです。事務所の机でいくら考えても何も出なかったアイデアが、帰宅のため事務所を出て歩き出した途端思いつくこともよくあります。
またシーズン商品を企画する上で重要視していることは、季節に合った履き心地のよい靴下であるかどうかです。靴下は肌に直接触れるものなので、いくら見た目がよく出来上がったとしても、着用時に不快感があると履き続けることが辛くなります。そのためサンプル作成の段階でその点は必ずチェックしています。日本の気候や環境に合った靴下を提案できることは日本製ファクトリーブランドの強みだと思っています。
ー 数ある商品のうち、ご自身が一番思い入れのある商品、またその理由を教えてください。
デザイナー:靴下ではないのですが「アイスコーヒーのくつした」には特別な思いがあります。2015年1月にヤマヤへ入社して4ヶ月ほど経った頃、テイクアウトのアイスコーヒーをいつものようにデスクに置こうとした時、普段使っているコースターが見当たらず、その場しのぎでたまたま近くにあったペットボトルカバーを代わりに敷いたことがきっかけになりました。下に敷かれたペットボトルカバーを眺めていると「アイスコーヒーのカップもペットボトルのようにカバーで全体を包めば側面の水滴を抑えることができるのではないか」とひらめき企画書を提出しました。
当時調べた限りでは世の中に類似品がなかったので、売り出すにあたり「どういった商品で」「どのように使うのか」をわかりやすく伝えるためネーミングやパッケージに工夫を凝らしました。企画内容はほぼそのままの形で採用され、入社したての新人にも関わらず企画からパッケージまでを任せていただいたことに大変感謝しています。
アイスコーヒーのくつしたのパッケージは
日本パッケージデザイン大賞2017 家庭用品、一般雑貨部門にて入選 しました。
ー 糸季オリジナル商品、お土産としても人気の高い「鹿」シリーズ、ちょっとリアルな鹿柄はホフマン2018SSシーズンテーマ「森と湖」アイスコーヒーのくつしたがはじまりでした。また、鹿の動作を捉えた動きのあるデザインで人気の奈良の鹿柄は2021AW「いきもの」から。
それぞれ当時の企画段階ではどのような構想があったのでしょうか、そしてこだわりポイントは?
デザイナー:どちらも企画当初から1シーズンだけで生産終了ではなく、その後も糸季で継続して展開したいと考えていました。工場の所在地である奈良県にちなみモチーフは「鹿」の一択。男女問わず幅広い年齢の方に履いていただきたいと思い、可愛らしさよりもリアルな鹿を表現することにこだわりました。奈良のスタッフに鹿の画像を送ってもらったり、「奈良公園 鹿」で画像検索をかけ参考資料を集めたりしましたが、そう都合よく望んでいるポーズの画像があるわけもなく、最終的には「角はこの画像から」「体はこの画像から」と複数の画像を組み合わせて1体の鹿柄作っていきました。完成までには色々と苦心しましたが、出来上がったものを皆様に喜んでいただけて嬉しい限りです。
余談ですが、現在販売している鹿靴下はHoffmannのタグではなくオリジナルの商品帯 。
こちらの商品帯は糸季スタッフのデザイナーが手掛けました。靴下のどこかに存在している「鹿せんべい」を上手くアレンジしたデザインにもご注目ください!
ー あなたにとって靴下とは?
デザイナー:「私と社会を繋ぐもの」です。
以前、お客様に「Hoffmannの靴下を履いている時は商談が上手くいく気がする」と言われたことがありました。もちろん靴下自体に特別な効果や効能があるわけではなく、その方の実力あってこその結果だと思っています。しかし、商談へ向かう際のちょっとした気持ちの切り替えの役に立っていると知り嬉しく思ったことを覚えています。
1足の靴下が誰かの生活や環境によい変化をもたらし、その影響がまた他の誰かに続いていくと想像すると、靴下を通して社会の輪の一員として存在していることを感じます。
あとがき
商品企画のお話、いかがでしたでしょうか。
実はホフマンは2024SSでブランド展開を終了します。ラストテーマは、「THANKS」
1993年にスタートしたブランドはプロデューサーを初め、企画担当者も様変わりしながら多くの従業員が携わってきました。
今、この記事を編集している私も実は過去に数型企画したこともあり、お客様からの反響に感謝の気持ちと共に喜びを感じていました。
沢山のお客様の足元を彩ってきたブランドは一区切りいたしますが、より新たな展開へと進化していきます。
また新展開の情報などはオンラインストアでもお披露目していきますので今後ともご贔屓いただけますとありがたいです。
次回は「完結編」、糸季で働く人々の登場です。どうぞお楽しみに!
企画・構成/ 清瀬 表題/ 藤原 編集/熊谷