機楽〜はたらく #4
編み機とハタラク職人のモノ語り
連載企画 第四回目、
奈良県・広陵町にある靴下工場「ヤマヤ株式会社」
生産現場から、先縫い工程職人にインタビュー。
さて、いきなりですがみなさまが履いている靴下、つま先にご注目ください。
写真のように糸季の靴下ではつま先のポイントになるよう、赤い糸で縫われている商品もありますが、商品の大半はあまり目立たないように縫製されているかと思います。
何故このつま先を縫う工程が生じるのかを今回ご紹介していきます。
筒状に編まれた靴下生地のつま先側を専用のミシンで縫製して口を閉じています。このつま先部分を縫い合わせる作業工程を「ロッソ」や「先縫い」と私たちは言っています。
前回の記事で紹介したダブルシリンダーの機械で筒状に編み立てられた靴下は、つま先部に次の履き口がつながっていて、長ーーーい状態で連続しています。
▼連結している様子がこちら
この連なった状態の靴下を切り離す工程のことを“抜き”といいます。▼ハサミで両サイドに切り込みを入れ、糸を抜いていきます。
すると連結部分が動画のようにスルッと切り離されます。
連結部分は「捨て糸」と呼んでいます。
編み機によってはつま先部分も縫製する機能を備えた「オートリンキング」もあります。リンキング式で編みあがったつま先部分の縫い目は足の当たりが良いという特徴があります。
主に、ミシンだと縫い目が目立ちやすくなるハイゲージの靴下に適していますが、
ソックスの形状や使用する糸によっては採用できない場合もあります。
糸季ではこれまで靴下端材、ロッソ輪っかを幾度と紹介いたしましたが、
この「先縫い」工程により、輪っかができます。
▼天板上部にご注目ください
動画で先縫いをしている靴下はコチラ
動画で先縫いをしている靴下はコチラ
今回はこの靴下工程には欠かせないロッソ職人2人にインタビュー
キャリア40年以上!ヤマヤでは勤続20年以上の敏腕職人 野村と、
小学生になったお子さんと同時期に先縫い職人の道へと飛び込んだ従業員 弓場にインタビュー。
ちなみに、入社当時小学1年生だったお子様はこの春から中学生。母子共に立派に成長中です 笑
ー概ね一日の作業量を教えて下さい。
野村 靴下のベースカラーによって縫い糸を変える作業があるので、その日により靴下のそれぞれの作業量も違ってくるので算出は難しいですが、
連続して作業する場合にはだいたい一時間あたり30枚、15足ぐらいです。
弓場 作業途中で現場や担当者に確認が必要なところもあって、作業中断をせざるを得ない場合もあったりします。
ー縫いやすい靴下、素材により感覚など違いがあるものでしょうか?
野村 はい。ローゲージソックスの方が縫いやすいです。ハイゲージソックスは引っかかりやすかったりします。
素材では綿が一番縫いやすく、シルクやリネンの素材は慎重になります。
弓場 作業が難しそうな靴下では、まだまだ野村大先輩の腕に頼ります。
ー苦労話を教えて下さい。
野村 捨て糸の素材によって縫いやすさが変わってくるので、編み立て職人に直談判しにいくこともあります。
ガラボウ商品を縫い合わせるとき、これまでたった1度ですがミシン針が飛んでしまったことがあり、針の捜索も大変でした。
弓場 未経験で飛び込んでしまったので数をこなしていくことに苦労しました。
ー最後に、お二人にたずねます。あなたにとって「靴下」とは?
野村 日常に染みついています。あまりに日常なので正直なところ深く考えたことがないぐらいです 笑
弓場 寒がりの私にとっては欠かせないアイテムです。寝るときも履いています。
先縫い職人たちが作業した後のカットされたロッソ輪っかを糸季店舗ではプレゼントしております。適度に伸びがあり、色も豊富なので手作りマスク紐やカーテンタッセルにしたり、アイデア次第でいろいろと活用いただけますよ◎
あとがき
先縫い職人のお話、いかがでしたでしょうか。
単調な作業工程でありながらも、1ミリにも満たない隙間に靴下を通していきます。
このインタビュー中にも実際にチャレンジさせていただきましたが大変難しく、
長年の安定した目と勘が、靴下工程には欠かせないと実感しました。
次回も生産現場から、まだまだある製造工程のその後のアレコレを追っていきます。
どうぞお楽しみに!
企画・構成/ 清瀬 表題/ 藤原 編集/熊谷