新商品やイベントのお知らせ

新着情報

Hoffmann 24SS 入荷しました

Hoffmannの春夏の新作が入荷致しました。4月まで順次アップしていきます。

Hoffmannブランド統合のお知らせ

拝啓 平素より格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。

 さて、ソックスブランドとして1994年にスタートしてから30年にわたりご愛顧賜わりましたHoffmannですが、2024年春夏をもちましてHoffmannとしては終了し、2024年秋冬物からは、yahaeの新シリーズとして展開いたします。

 yahaeは、ものづくりに対する弊社ヤマヤ株式会社の想いを極めた基幹ブランドとして2021年にスタートいたしました。Hoffmannにおいてもそのものづくりの根幹となるところは同じという点から、yahaeに統合し、yahaeの中でデザイン化されたシリーズとして展開することにいたしました。

 30年間培ってまいりましたHoffmannのものづくりの技をyahaeに注いで参ります。引き続きお引き立て賜りますようお願い申し上げます。

 

営業時間・店休日のお知らせ <2023年12月〜年始>

【2023年12月】
営業時間 10:00〜17:30
店休日 月曜日

【冬季休業】
12月28日(木)~1月2日(火) 

【1月3日(水)/4日(木) の営業時間】
11時〜16時

雑誌掲載のお知らせ

2023.10.04 2023年10月号 OZ magazine TRIP

特集・読みものページ更新しました

価格改定のお知らせ<2023年9月>

この度、「ORGANICGARDEN」ブランド全ての商品におきまして、製品価格を全面的に改定させていただくことになりました。
詳細につきましてはこちらでご案内しております。

季節のおすすめ

長くご愛用いただくために

靴下のお手入れ

オーガニックコットン商品について

オーガニックコットン商品には、黒い斑点や糸くずのようなものが見えるものがあります。これは、オーガニックコットンを収穫する際に付着した葉や種が取り除ききれず付着したものです。
特に生成(キナリ)は綿本来の色で染色や漂白を施していない為、黒く斑点が目立ってしまいます。
(一般的に流通している純白のコットンは漂白しているため黒い斑点も目立ちません。)

汚れているわけではありませんので、問題なくご使用いただけます。
紡績する工程でも綿本来のやわらかな風合いを残すためにできるだけ化学処理をせず仕上げています。そのため黒い斑点をすべて取り除くことは難しくその点をご理解いただけますと幸いです。

お洗濯について

少しでも長く履いていただけるように

糸季の靴下は、糸・糸の染め方にこだわり、ひとつひとつ丁寧に編み立てています。
ですので、靴下を消耗品とは考えておりません。
ほんの少しの手間で、靴下は長持ちしてくれます。

糸季の靴下を長く履いていただけますように、以下の手順でお洗濯いただくことをおすすめします。

ポイントは、

  • ニットを洗うときのことを思い出すこと と、
  • 裏返し洗い です。

 

1・靴下の表側を軽くはたき、ホコリをはらう

  • 乾いた状態ではらうのがポイント
    (表側につく泥・砂汚れは水に溶けないため)

2・靴下を裏返す

  • 汚れ落ちと生地の傷み防止のため。
    ( 詳しくは後ほど )

3・手洗いがベスト! ( 洗濯機も可 )

  • 洗濯機可でも、手洗いがおすすめ
  • 洗濯機を使う場合は、ネットに入れて、手洗いコース・おしゃれ着洗い(洗濯機メーカーにより名称は異なります)などの水流がやさしい設定で洗う。

    4・履き口を上にして陰干し

    • 履き口・ゴム部分を上にします。(ゴムの劣化を防ぐため)
      裏返しのまま干してもOK。
    • 直射日光を避け、陰干し。(生地の傷みを防ぐため)

      - 裏返し洗いの理由 -  

      • 靴下の裏側にはニオイの元になる皮脂や汗などの汚れが付着します。裏返して洗うことで付着した汚れから発生する雑菌の繁殖を防ぎ、嫌なニオイを抑えることができます。
      • 繊維は摩擦によるダメージを受けやすいので、裏返して洗うことで風合いが守られます。色落ちや毛玉、毛羽立ちも起こしにくくなります。

        -洗濯表示-

        糸季の靴下のほとんどが、以下の洗濯表示です。
        洗濯機使用可ですが、上に書いたとおり 手洗いを推奨 しています。

        液温は30℃を限度とし、洗濯機で非常に弱い洗濯ができる

        塩素系及び酸素系漂白剤の使用禁止 タンブル乾燥禁止
        日陰のつり干しがよい アイロン仕上げ禁止 ドライクリーニング禁止

        ORGANIC GARDENの商品について

        • 防縮加工をしていませんので、洗濯後多少の縮みが出ます。
        • 製品により、熱に弱い弾性糸を使用していますのでアイロンや乾燥機のご使用はお避けください。
        • 薬品洗浄、漂白などをしていない原綿のままなので綿花の茎やかすが混じってますが、洗濯をしていくうちに良くなります。
        • カラード・コットン製品は日光により色が変化していきます。
          茶色は色が濃くなり、グリーンは茶色、またはグレーがかった色に変化していきます。これは天然のカラード・コットンならではの独自の変化です。
          洗濯時には環境や健康に配慮した、せっけんをお使いいただくことをおすすめします。※特に糸季では、がんこ本舗さんの洗剤をおすすめしています。

        環境と人に優しいおすすめの洗剤

        がんこ本舗

        糸季でおすすめしている洗濯洗剤を作られている「がんこ本舗」さんは20年以上も前から排水を汚さず、環境に配慮しながらも洗い上がりはスッキリで肌にもやさしい洗剤作りに取り組まれています。(かわいい紙段ボール包装も、プラスチックによる海洋汚染防止の為とのことです)

        糸季では「海へ…」「海へ…Step」両方取り扱っておりますが、特に「海へ…Step」は「すすぎ0回」という驚きのキーワードで注目を集めています。

        改めて特徴をまとめると、

        1:すすぎは0回でOK!

        その理由は「再付着防止剤」の働きにより、洗い工程で衣類から落ちた汚れが衣類につくことを防いでくれます。
        ドラム式の場合でも、すすぎ1回でOKです。
        使用する水が少なくてエコな上に、節約と時短にもつながります。

        2:シルク・ウール・カシミヤなどのドライマークも洗える!分け洗い不要で手間いらず!

        洗剤の液性が中性の為、強いアルカリが苦手なドライマーク推奨素材も洗えます。分けて洗う手間がなくなることで、こちらも使用する水が少なくてエコな上に、節約と時短にもつながります。

        3:洗いあがりふんわり柔軟剤いらず・タオルや赤ちゃんの肌着洗いにも

        水中にできる細かい気泡が繊維の奥にまで浸透することで、繊維1本1本が立ち上がり柔軟剤なしでもふんわり仕上がります。
        パッチテスト・スティンギングテスト・アレルギーテストを行い、日本皮膚科学会認定専門医による安全性が証明されています。

        合成香料・リン・漂白剤・防腐剤・蛍光剤などの添加物不使用で、洗濯中はラベンダー精油の心地よい香りが楽しめます。

        赤ちゃん用に特別な洗剤を買う必要もありません。

        :::::::::::::::::::::::::

        なんと水で希釈することでキッチンやお風呂、床や窓のお掃除にも使えるんです。

        <軽い汚れ用>拭き掃除(窓・フローリング・家具・壁)・食器洗いなど
        スプレーボトルなどに、「海へ…Step」15ml、水225mlを入れて使います。(「海へ…Step」1に対して、水15の割合)

        <がんこ汚れ用>換気扇・ガスコンロ・グリル・お風呂・トイレ・洗車など
        スプレーボトルなどに、「海へ…Step」45ml、水180mlを入れて使います。(「海へ…Step」1に対して、水4の割合)

        ※お掃除には「巻き巻きがんこクロス」もおすすめ

        <がんこ本舗さんの商品パンフレットから抜粋し、編集しております>

        :::::::::::::::::::::::::

        このように思わず使いたくなる特徴を持つ「海へ…Step」

        重曹やクエン酸などのナチュラルな洗浄剤との併用も可能です。

        また、すすぎ1回推奨の「海へ…」もすすぎ回数以外の特徴はほぼ変わらないエコで肌にやさしい洗剤なので、まずはこちらを試してみるのもいいかもしれません。(スタッフも実際に使用していますが、繊細なシルクのインナーソックスなども柔らかく洗い上げてくれています。)

         

        special contents

        特集・読みもの

        編み機とハタラク職人のモノ語り

        機楽-はたらく-

        #1 <前編>

        機楽〜はたらく

        編み機とハタラク職人のモノ語り はじまります。

        連載企画 第一回目、

        奈良県・広陵町にある靴下工場「ヤマヤ株式会社」

        代表取締役社長 野村佳照 、取締役専務 野村泰嵩 親子にインタビュー < 前編 >


        今回は、現在の社屋から徒歩数分の距離にある、社長自邸敷地内の旧工場を訪問しました。




        ーヤマヤは昨年100周年を迎えました。その歴史の中で代々受け継がれてきていることはありますか?

        社長 祖母より「代々、我が事よりひと様のことを大切に思う家筋」という話を聞かされてきました。昭和58年、個人経営から法人に改組する際、先祖のその精神を引き継ぐ意味で、江戸時代文政期に木綿業を創業した「疋相村弥兵衛」以来の屋号であった「山や」の名称を用い、山屋株式会社としました。平成4年、CIcorporate identity)導入を機に、社名をヤマヤ株式会社に改称しました。

         

        ー家業について子どものころ、どう感じていましたか?

        専務 脇役的な立ち位置ではありながら、さりげなく個性も表現できる靴下というアイテムに、とても魅力を感じていました。幼い頃から服や鞄などのファッションにずっと興味はあったので、その一部である靴下の生産に家業を継ぐ形で携わることは、すごく自然にイメージできました。今思うと、大学や就職先などの進路の選択の際には、将来的な靴下工場での勤務を視野に入れて、無意識の内に少しでも役立つような道を選んできたと思います。

         

         

        ー旧工場には 「安定した高品質」の文字が掲げられていますが、そのために配慮や工夫されていることは?

         社長 品質をとは何かと問うと、人によりまちまちの答えが返ってくると思いますが、一般的には、キズやヨゴレがなく、生地の調整がとれていて、丈や横伸びに支障がなく、外見も整っている靴下、と言えます。ところが、そのような品物ができあがっても、それと同じものを本生産で再現しなければ意味がありません。同じように作ればいいだけのこと、と思われるでしょうが、それが難しいのです。気温や湿度により糸の状態が変化します。コーンに巻かれた糸の形状も変化します。糸の通り道に綿ぼこりが溜まります。常に、編み上がりの生地をチェックする必要があるのです。いい品物を確かな品質で安定して作る、という意味で、「安定した高品質」という言葉を標語として、旧工場に掲げました。その考えは、ヤマヤのものづくり基本的な考えとして今も変わりありません。

         

        ーこの旧工場での思い出などがあれば教えて下さい。

        専務 よく兄弟で卓球をしたことを覚えています。また広い空間があるのに、全く生かされていない現状について、よく何かできないかと考えを巡らせたことも記憶しています。ここをリノベーションして住まいにすることも考えましたが、結果的にはなるべく多くの方が訪れることができる空間にしたいと考え、店舗・ギャラリーとしての展開を決めました。

         

        あとがき

        野村親子はインタビューでもあったように家業であるものづくりや考え方を共にし、これまで歩んで参りました。

        このように改めて話を聞く機会が少ない中、この連載はわたしたち従業員にもヤマヤについて学ぶきっかけとなり、

        多くの方に知っていただけることを嬉しく思っています。

        旧工場の新展開については、また別途お知らせしますね。

        暑い中、長年の蓄積された編み機の埃を社長自らが懸命に拭っている様子にもご注目ください。

        次回、後編では更に深くたずねていきます。

        みなさまへ想いがとどきますよう、心をこめて連載していきます。どうぞお楽しみに!

         

        企画・構成/ 清瀬  表題/ 藤原 編集/熊谷

        #2 <後編>

        機楽〜はたらく

        編み機とハタラク職人のモノ語り 

        連載企画 第二回目、

        奈良県・広陵町にある靴下工場「ヤマヤ株式会社」

        代表取締役社長 野村佳照 、取締役専務 野村泰嵩 親子にインタビュー < 後編 >

         

         

        ー1994年、「ORGANIC GARDEN」「Hoffman」2つのファクトリーブランドを立ち上げた経緯、当時の様子など教えてください。


        社長 戦後の高度経済成長に陰りが見え出し、1971年には1ドル360円という固定相場制が終了すると、韓国や中国から輸入品が増えるようになりました。このままでは、製造業に未来は無い、という危機感から、自社製品を作り自らの手で販売する自立工場を目指しました。ハートデザイン戸田氏の協力を得て、アパレルに精通したプランニング会社を加え、1994年 インポートテイストの匂いを感じる、おしゃれなソックスブランドとして「Hoffmann」がデビューしました。現在のようにEC(電子商取引)といった取引手段もなく、ゼロからの新規取引先の開拓は容易なことではありませんでした。

        ホフマンのスタートと同じ時期に、県内で繊維製造業を営む企業で、ヤマヤと同様に製造業の未来に危機感をもつ繊維業の有志が集まり、協同組合エヌエスを設立しました。商品企画を契約していたプランニング会社から環境にやさしいオーガニックコットンという素材の提案があり、環境問題が社会問題化しつつある中、その素材でそれぞれ得意なアイテムを商品開発することになりました。

        ー2020年には東京江東区清澄に糸季姉妹店、ファクトリーブランド“yahae〈ヤハエ〉“の立ち上げの経緯を教えて下さい。

        専務 時代が急速に変化する中で、遠い未来にも通用する究極の定番を追求したいと考えるようになりました。そこでオーガニックコットンを中心としたサスティナビリティを意識した素材使いを軸に、思いを入れて選びたい日や、特別な人へのギフトとして選ばれるような靴下を作ることにしました。私たちの歴史と未来の交差点にあるプロダクトの集合体がyahaeで、それを販売する場所がyahae kiyosumiです。

         

        ーブランド設立から四半世紀を過ぎ、一番苦労したエピソードをお聞かせください。

        社長 Hoffmannについては、一弱小工場が立ち上げた無名のソックスブランドとして、相手にはされません。当時、工場がダイレクトに小売店に販売することはタブー視されていた時代でした。また、靴下自体、アパレルアイテムというより雑貨としての扱いで、洋品店での関心も低いということもありました。

        それでも、営業を続けながら、取引店舗はできてはきましたが、なかなか請求通りの支払いをしてくれません。ようやく支払いしてくれても半分だけという有様です。これではいくら扱い店舗が増えても、こちらが企業として成り立ちません。完全買取り、完全回収を取引条件に、一から出直しました。

        協同組合エヌエスの「ORGANIC GARDEN」については、当時、まだ、エコという言葉が一般には理解されていない時代で、百貨店のイベントでも、「エコ」という言葉は使えずに、「自然」とか、「健康」という言葉をキーワードとして使いました。新規の営業で、オーガニックコットンの特性を力説するあまり、そのお店の商品をけなすのか、と言わんばかりに店主の反感を買ったこともありました。

         

        ー最後に、お二人にたずねます。あなたにとって「靴下」とは?

         社長 靴下を作ることは、私に与えられた使命のように感じています。ものがあふれている現在社会の中で、無闇な競争をしてまで生き残るという気持ちは、毛頭ありません。むしろ、そういう状況になれば、潔く業界から身を引くべきと考えます。気に入っていただける、喜んでいただけるいいものを世に送り出す。多くの人にこの製品を届けたい、その思いで工場経営を行っています。この考えは、ヤマヤのものづくり、Yamaya Quality(ヤマヤ品質)のベースになるものです。

         

        専務 靴下は、簡単にその日のスタイリングの方向性を決めることができるので、とても便利でかつ非常に重要なアイテムだと思います。例えば茶色のセットアップのスーツを着るとします。その時にネイビーのビジネスソックスを履くのと、赤いソックスを合わせるのとでは、全く印象が違います。“I never leave home without a nice pair of socks. ”というアメリカ建国の父と呼ばれる政治家・Benjamin Franklin の言葉が僕は好きなのですが、例えばコンビニに行く時でも、靴下やファッションにはこだわりを忘れないようなスタイルがかっこいいと感じます。

         

        ー旧工場ギャラリーにて展示中の編み機

        【メーカー】

        RUMI F.LLI / BRESCIA - ITALY

        【編み機の特徴】

        イタリア・ルミ社

        インターシャ柄専用の靴下編み機

        編み口が4箇所あり、右左に反回転しながらゆっくり編んでゆきます。本格的なアーガイル柄の靴下を編むことができ、この編み機で製作したカシミヤ糸のアーガイル柄ソックスは、1981年に開催された「奈良県靴下品評会」で「奈良県知事賞」を受賞しました。この受賞がきっかけで、国内でBURBERRYブランドが展開されることになった時、製造工場として弊社に声が掛かりました。

        画像 左:OFFICINE MONCENISIO社のカタログ  イタリア・トリノの当時の機械工場の写真なども盛り込まれています。

        画像 右:RUMI F.LLI社のカタログ  伊・英・独・仏語訳された貴重な資料です。

        【メーカー】

        OFFICINE MONCENISIO / TORINO - ITALY

        【編み機の特徴】

        イタリア・モンセンシオ社

        ジャガード柄靴下編み機

        当時、国内の編み機メーカーの技術はヨーロッパの機械メーカーには遠く及ばぬところでした。この編み機の一代前のトリコーラー機(別の倉庫に保管)は、昭和30年代から始まった高度経済成長期に大いに活躍した編み機でしたが、国内では希少な編み機で、操作マニュアルらしきものも無い時代、夜が更けるまで編み機と向き合っていた職長と先代(野村圭司)の姿が幼い頃の記憶として残っています。


         

        この編み機で編み立てた現存する当時の靴下は

        なんと、ナイロン100%!

         

        あとがき

        ブランド立ち上げからのエピソード、いかがでしたでしょうか。
        オーガニックやサスティナブルなどが当たり前のように耳にするようになった昨今ですが
        ブランド立ち上げの頃は、大量生産、大量消費が全盛の時代でした。
        厳しい状況下にありながらYamaya Quality を貫いてひたむきに歩んできた野村社長。
        この想いを受け継ぎ、整えられた土壌に新たな種を蒔く野村専務。どのように実り、どのような花が咲くのか?
        今後が楽しみです。お客様からの光をエネルギーに良い花が咲かせられるよう、わたしたち従業員一同はその肥やしとなり、大切に育てていく所存です。

        次回は生産現場から、ベテラン靴下職人やヤマヤで最古のレジェンド編み機も登場の予定です。

        どうぞお楽しみに!

        企画・構成/ 清瀬  表題/ 藤原 編集/熊谷

        #3

        機楽〜はたらく


        編み機とハタラク職人のモノ語り 

        連載企画 第三回目、


        奈良県・広陵町にある靴下工場「ヤマヤ株式会社」
生産現場から、

        ベテラン靴下職人にインタビュー。


        靴下はどのように編み立てられているのか?
        ご周知の方もいらっしゃるとは思いますが、実はとっても奥深い靴下の世界。
        靴下を編み始める前には編み機に送り込むデータの作成、糸のセッティングや調整、様々な工程があります。
        ヤマヤで製造する靴下の大半の編み機は靴下専用丸編機。シリンダー(円筒)を回転させながら編み立てていきます。子ども用と大人用では脚回りサイズが違うので編み機によって針が整列しているシリンダー径の大きさが違ってきます。また、靴下の厚み・糸の太さにより針数が変わります。例えば薄手のものは180−220本。厚手のものは44-96本の針がシリンダー状に整列しています。ちなみに、5本指の靴下は横編み機。同じ靴下でも編み方や機械も様々です。

        前置きが長くなりましたが、ダブルシリンダー(※1)の編み機をメインで担当する駒井、そしてシングルシリンダー(※2)、最新鋭機を担当する東山。両人とも一級ニット製品製造技能士(※3)のベテラン職人たちにたずねていきます。



        ー自身の好きな製造工程があれば教えてください。

        駒井 ダブルシリンダーの編み機で柄出しをする工程です。特に表目と裏目の組み合わせで立体的に凹凸感を表現するリンクス柄が特に面白いです。 

        昭和感たっぷりのコンピューター。ヤマヤではまだまだ現役。フロッピーディスクでデータを読み込みます。 ▶▷ リンクス柄の商品はこちら



        東山 シングルシリンダーは柄物が多いのもあり、調整にも一苦労です。生産リスクが高い商品もあるので、トラブルなく生産がスムーズに進む時が一番嬉しいです。


        ーお気に入りの編機、その理由を教えて下さい

        駒井 ダブルシリンダーの機械は柄を変更するにも一苦労。なかなかクセがある分、そのことが非常に面白いと思っています。


        若手育成中の微笑ましいシーンです。 はじめての糸かけ作業にドキドキのひとコマ。

        東山 日本製の機械が一番好きです。日本製というだけでどこか信頼できる編み機です。靴下向け丸編み機メーカーが編み機事業から2015年に撤退してしまいました。国内の編機メーカーが存在しないことが非常に残念でなりません。



        ー編み機との関わりの中で苦労話を教えて下さい。

        駒井 ダブルシリンダーの修繕です。繊維品の製造にはどうしてもホコリが発生してしまいます。
        機械の中に入り込んで誤作動を起こさないよう大敵を取り除く作業には苦労します。非常に重量がある上部シリンダー。針交換時にはシリンダーを持ち上げ手入れをする必要があり、この作業が年齢とともにきびしく感じるようになってきています。


        東山 昨年末にイタリアにある世界最大の靴下機械メーカー、ロナティ社の新鋭機が入り、マニュアルは外国語表記。編機の専門的な英語知識が必要となるため、用語などの翻訳作業に時間がかかってしまいます。


        ー最後に、お二人にたずねます。あなたにとって「靴下」とは?

        駒井 必要品。当たり前に存在する、なくてはならないものです。

        東山 消耗品。だけども、そこに履き心地を最重視しながら編み立てているのが私のこだわりでもあります。



        ーヤマヤのレジェンド編み機がつくるもの

        日本製編機の製造メーカーがなくなってしまいましたが、メンテナンスや部品の調達などはどう賄っているのか?
        部品は現在でも調達は可能のようです。コンピュータ制御が進化して以来、柄表現など豊富なラインナップの靴下を製造できるようにはなりましたが、基盤が破損してしまうと使えなくなるリスクがあったり、生産効率が決して良くないという理由から、業界内ではやむを得ず編機を手放すという苦渋の決断をされている工場も少なくはありません。そんな中、廃業された靴下工場からヤマヤでは編機を引き取り、手を加えながら現在も活躍しています。今回はそのレジェンド編み機を紹介いたします。

        [イギリス製ベントレー社の編み機。]

        針数44本という特殊な編み機で、ローゲージソックスが編みあがります。ヴィンテージマシーンで編み立てた靴下は、どこか懐かしい手編みの靴下のような雰囲気で、ボリュームがある靴下に仕上がります。古い編機は編むのに時間がかかりますが、昔の機械ならではの風合いで、他にない特別な一足になります。 ▶▷この編み機から誕生した靴下はこちら

        [日本製 B式靴下編機(※4)

        靴下編み機として日本で最初に完成され、この風貌からも靴下産業の歴史を感じるこの編機。
        口径の小さい編み機です。つまりは赤ちゃんのソックスを編立てています。▶▷この編み機から誕生した靴下はこちら


        【用語解説】

        (※1)ダブルシリンダーとは
        上下のシリンダー(円筒)に沿って針が整列していて、上で糸をとったり下で編んだりすることにより、
        縄柄や畦編み(リブ編み)、鹿の子編み、リンクス編み、ジャカード編み、タック編みができる編み機のこと。
        編み機のご機嫌を見ながら、ゆっくり編み立てることでふっくらとした靴下が仕上がります。

        (※2)シングルシリンダーとは
        シリンダー(円筒)の針が下にだけある編み機。PCで柄や文字などを入力し、花柄や細かい柄を表現することが可能です。

        (※3)ニット製品製造一級技能士とは
        技能士とは各都道府県の職業開発能力協会が実施する技能検定に合格した人に与えられる国家資格です。


        (※4)B式靴下編機とは
        平編靴下を作る旧式シングルシリンダー編機のこと

        あとがき

        ベテラン職人のお話、いかがでしたでしょうか。
        職人に話を尋ねると専門用語が飛び交います。何時作っても同じように仕上げるのが基本で、そのために、糸の色による違い、巻きの状態、室温や編機の熱の状態など様々な条件のもとで一定の製品を作り上げるように大変苦心しています。単純に機械操作をするだけはでなく、熟練された匠の技も必要不可欠です。そして履き心地を追求し続ける職人の強いこだわりがヤマヤの靴下に集約されています。
        次回は生産現場から、靴下製造は様々な過程を経て編み上がります。編み立てた靴下その後のアレコレを追っていきます。 どうぞお楽しみに!

        企画・構成/ 清瀬  表題/ 藤原 編集/熊谷

        #4

        編み機とハタラク職人のモノ語り 
        連載企画 第四回目、

        奈良県・広陵町にある靴下工場「ヤマヤ株式会社」
生産現場から、先縫い工程職人にインタビュー。

        
さて、いきなりですがみなさまが履いている靴下、つま先にご注目ください。

        写真のように糸季の靴下ではつま先のポイントになるよう、赤い糸で縫われている商品もありますが、商品の大半はあまり目立たないように縫製されているかと思います。
        何故このつま先を縫う工程が生じるのかを今回ご紹介していきます。

        筒状に編まれた靴下生地のつま先側を専用のミシンで縫製して口を閉じています。このつま先部分を縫い合わせる作業工程を「ロッソ」や「先縫い」と私たちは言っています。

        前回の記事で紹介したダブルシリンダーの機械で筒状に編み立てられた靴下は、つま先部に次の履き口がつながっていて、長ーーーい状態で連続しています。

        ▼連結している様子がこちら

        この連なった状態の靴下を切り離す工程のことを“抜き”といいます。

        ▼ハサミで両サイドに切り込みを入れ、糸を抜いていきます。

        すると連結部分が動画のようにスルッと切り離されます。

        連結部分は「捨て糸」と呼んでいます。

        編み機によってはつま先部分も縫製する機能を備えた「オートリンキング」もあります。リンキング式で編みあがったつま先部分の縫い目は足の当たりが良いという特徴があります。
        主に、ミシンだと縫い目が目立ちやすくなるハイゲージの靴下に適していますが、
        ソックスの形状や使用する糸によっては採用できない場合もあります。


        糸季ではこれまで靴下端材、ロッソ輪っかを幾度と紹介いたしましたが、
        この「先縫い」工程により、輪っかができます。

        ▼天板上部にご注目ください

         

        動画で先縫いをしている靴下はコチラ

        動画で先縫いをしている靴下はコチラ


        今回はこの靴下工程には欠かせないロッソ職人2人にインタビュー
        キャリア40年以上!ヤマヤでは勤続20年以上の敏腕職人 野村と、
        小学生になったお子さんと同時期に先縫い職人の道へと飛び込んだ従業員 弓場にインタビュー。
        ちなみに、入社当時小学1年生だったお子様はこの春から中学生。母子共に立派に成長中です 笑

        
ー概ね一日の作業量を教えて下さい。
        野村 靴下のベースカラーによって縫い糸を変える作業があるので、その日により靴下のそれぞれの作業量も違ってくるので算出は難しいですが、
        連続して作業する場合にはだいたい一時間あたり30枚、15足ぐらいです。

        弓場 作業途中で現場や担当者に確認が必要なところもあって、作業中断をせざるを得ない場合もあったりします。


        ー縫いやすい靴下、素材により感覚など違いがあるものでしょうか?
        野村 はい。ローゲージソックスの方が縫いやすいです。ハイゲージソックスは引っかかりやすかったりします。
        素材では綿が一番縫いやすく、シルクやリネンの素材は慎重になります。

        弓場 作業が難しそうな靴下では、まだまだ野村大先輩の腕に頼ります。

         
ー苦労話を教えて下さい。

        

野村 捨て糸の素材によって縫いやすさが変わってくるので、編み立て職人に直談判しにいくこともあります。
        ガラボウ商品を縫い合わせるとき、これまでたった1度ですがミシン針が飛んでしまったことがあり、針の捜索も大変でした。

        弓場 未経験で飛び込んでしまったので数をこなしていくことに苦労しました。

        
ー最後に、お二人にたずねます。あなたにとって「靴下」とは?



        野村 日常に染みついています。あまりに日常なので正直なところ深く考えたことがないぐらいです 笑

        弓場 寒がりの私にとっては欠かせないアイテムです。寝るときも履いています。

        先縫い職人たちが作業した後のカットされたロッソ輪っかを糸季店舗ではプレゼントしております。適度に伸びがあり、色も豊富なので手作りマスク紐やカーテンタッセルにしたり、アイデア次第でいろいろと活用いただけますよ◎

        あとがき
        先縫い職人のお話、いかがでしたでしょうか。
単調な作業工程でありながらも、1ミリにも満たない隙間に靴下を通していきます。
        このインタビュー中にも実際にチャレンジさせていただきましたが大変難しく、
        長年の安定した目と勘が、靴下工程には欠かせないと実感しました。

        次回も生産現場から、まだまだある製造工程のその後のアレコレを追っていきます。 

        どうぞお楽しみに!
 

        
企画・構成/ 清瀬  表題/ 藤原 編集/熊谷

        #5

        機楽〜はたらく
        
編み機とハタラク職人のモノ語り
        
連載企画 第五回目、
        
奈良県・広陵町にある靴下工場「ヤマヤ株式会社」
        
生産現場から、裏摘み・返し・傷見工程などの職人にインタビュー。

        
靴下工程では機械だけではなく、人の手と目が欠かせない重要な工程があります。
        
それが今回ご紹介する「裏摘み」と「傷見」という工程です。

        
柄物の靴下をお持ちの方は是非、靴下の内側にご注目ください。

        
何やら糸がうじゃうじゃ、、、と写真のようになっていることもあるかと思います。
        
筒状に編み立てていく中で糸が渡ったままになっています。
        
着用時に足の指が引っかからないように片足ずつ1枚1枚手作業で糸の切れ端を処理していく地道な作業が「裏摘み」という工程です。
        
自動トリマー機という機械もあるようですが、ヤマヤでは導入していないのでまだまだ人の手と目を頼りにしています。

        ちなみに写真の靴下はHoffmann22AW商品、9-1083|コットン Play music柄
        (※加筆 ご好評につき完売いたしました)



        

編み目の乱れを整えたり、破損がないかを一枚一枚、確認する作業が「傷見(きずみ)」という
工程。
        靴下を表に返し、「傷見板」にかぶせて検査します。

        画像のような柄物靴下は編立の段階で少し糸が混ざる場合があります。
        混在した糸を抜く後工程で修繕が必要な部分がすぐに分かるよう、シールで印をつけています。

        これらの工程では多くの人員が必要で、社内に勤務する従業員の他、居職(いじょく)従業員にも連日のようにお仕事を担っていただいています。
        
ヤマヤでは自社ブランドの他、OEM事業もしており、情報開示はできませんが人気のアパレルブランド靴下を実はヤマヤで作っていたりします。
        
納期に間に合わせるべく数をこなしてナンボ。ずっと座りっぱなしでの細かい作業には大変なご苦労があります。
        
無理をお願いすることも多く、「急ぎの分が仕上がりましたよ!」とご連絡をいただく度に感謝の気持ちで胸がいっぱいになります。

        それでは今回は1番キャリアの長い、ガラボウソックスなどの特殊な靴下から、編み柄が複雑で細かなチェックが必要な商品をメインにお任せしているベテランの居職従業員にインタビュー。

        ー 編み目やキズなどの検査は大変細かく気の抜けない作業ですが、その中でも難しく感じたりすることはなんですか?

        居職員 A品(製品となる品)、B品(キズなどがある商品)の判断を下すときです。見た目で明らかに判断しやすいキズは良いのですが、厳しく判断をする場合もあり、心苦しく感じることもあります。

        ー 1日の作業量は多い日でどのぐらいでしょうか?

        居職員 毎日平均して500〜700足、繁忙期には1,000足程度です。靴下の種類などにより作業時間はさまざまです。

        ー ご自宅での作業にあたりオン・オフの切替時に大切にされていることなどをお聞かせください。

        居職員 夫が朝早くに出勤するので、朝の早い段階で家事を一通り済ませることがルーティーン。自分のペースで作業を進めることができ、細かい作業もあまり苦痛に感じていません。性に合っているんだと思います。お花が好きなので一段落つく度に鉢植えの手入れをしたりすること、それが切替になっていると思います。

        ー 最後に尋ねます。あなたにとって靴下とは?

        居職員 生活の一部。年齢を重ねても仕事ができることで毎日の生活にもメリハリが出来、1日がとても充実しています。仕事がなかったらだらしなく過ごしていると思うので、仕事ができることに感謝、感謝です!


        
写真には写しきれないほど色鮮やかなお花たち。玄関先に沢山飾られていました。
        
花を愛する人は心清き人、という歌があるように、とても謙虚な方。
        
普段は電話でお礼をお伝えすることしかできなかったので、このインタビューを機にお人柄も知れてとても心温まりました。

        さて、続いてのインタビューは居職先や外注業者へ靴下を配達する専属ドライバーさんです。
        
70歳を過ぎても1袋が百足前後と相当な重量になる集荷袋の配達・荷降ろしなど。
        
暑い日・寒い日も関係なくアチコチ駆け回り、バリバリご活躍です。


        実は配達の他、教鞭を執っていらっしゃるとても博識な紳士です。
        言葉遊びがお好きなようで、知的な笑いをドライブ中に考えては話しかけてくださり、従業員を和ませてくれます。

        ー 居職や委託業者、多い日では何軒くらい訪問しますか?

        配達員  居職先は8軒ほど。その日によって行き先は異なります。


        ― 作業内容を伝える際、気をつけていることはありますか?

        配達員  「作業内容が不明な場合、電話などで直接ヤマヤの担当者へ確認してください」と伝えています。 伝言ゲームを例にすると、人から人へ物事を一字一句違わず伝えるということは思うより難しい。ただ、会社の組織、団体などで間違った情報が伝わってしまうと時には大変なことになってしまうこともあると思います。滞りなく伝達することは大切ですが、その時発することばが上意下達的にならないように心を配っています。

        ― 天候などで過去に苦労されたことはありますか?また体力勝負の業務、ご自身の健康管理などで心がけていることがあれば教えて下さい。

        配達員  毎日起床時、體(からだ)の声を聞くように心がけています。人は生まれてくるときに四百四病をもって出てきている。健康って四百四病が治っているとき。「四百四病(しひゃくしびょう)」は、仏教で、人間がかかるすべての病気のことをいいます。ちなみに「四百四病の外」というのは恋煩い。病気のうちに入らないから大したことはないと考えるか、どんな病気よりも恐ろしいものと考えるかは、その人次第でしょうか。

        ー 最後に尋ねます。あなたにとって靴下とは?

        配達員  靴下を履く行為は心と躰を起こす、覚醒させる最初の一歩。アイドリングと考えています。

        このインタビューを機に、ご紹介しきれないお話をいろいろと伺うことができました。
また別の形でご紹介できるよう思案中です。
        
そして、この読み物ページの表題「機楽〜はたらく」より、お得意の言葉遊びを楽しんでくださいました。
        「機楽」=「側楽」=「傍楽」=「働く」 だね!と。

         

        あとがき

        裏摘み・傷見工程などの職人のお話、いかがでしたでしょうか。
        
靴下ってもっと簡単にできるものと思っていた。そんな方も多いのではないでしょうか?
        
このような陰の立役者のおかげで靴下製造は成り立っております。
        
本当に重要な工程を担っていただいている従業員のみなさまへこの場を借りてお礼をお伝えしたいです。
        
いつもありがとうございます!!

        
次回もまだまだあるその後のアレコレを追っていきます。どうぞお楽しみに!

        
企画・構成/ 清瀬  表題/ 藤原 編集/熊谷

        特別編

        機楽〜はたらく 

        編み機とハタラク職人のモノ語り 
        連載企画 特別編

        糸季の姉妹店、福岡市の六本松にある勇気を振り絞って階段を登らないと辿り着けないという
        靴下マニア夫妻の営むお店、六本松のくつした屋さん How’s That(ハウズザット)。

        「みー」は知る人ぞ知るヤマヤ株式会社の社長令嬢。
        実は元従業員でもあり、我々にとって大切な家族ような存在です。

        ご夫婦共に生まれも育ちも靴下のまち 広陵町ですが、結婚を機にご主人のルーツ、福岡に移住。
        慣れない環境でさぞご苦労があるのかと思いきや、とても楽しそう。

        情緒溢れるアパートの2Fをセルフリノベーションをし、お店を構えてからこの10月で3年、
        日々更新されているSNSからもその盛況ぶりは伺えます。

        今回は里帰りフェアと題し、8/3(水)〜8/31(水) 特設コーナーを設け、糸季で販売予定です。


        ご主人「しゅん」は糸商勤務、「みー」は靴下工場勤務、という経歴のご夫妻。
        小さい頃から馴染みのある靴下業界に身を置き続けるお二方にインタビュー。


        高校生の頃、糸季でアルバイトを始める前、社長と共に挨拶にやってきたとき、
        店長との会話で「私、靴下は履きませーん!」とビックリ発言も飛び出したそう。
        今では伝説のように語り継がれる?当時のエピソードと心境の変化をまずは尋ねてみようと思います。

        ー この伝説エピソード、覚えていますか?また家業を幼い頃はどう感じていましたか?

        みー:夏は、ですよ、夏は!何度も言われて忘れたくても忘れられません・・・!学生の頃は特に家業を気にしたこともなかったです。うちは代々靴下を作るもんなんだと。ただ、工場で働く人たちの姿を漠然とかっこいいな〜と思っていたことは覚えています。

        ちなみに今では夏でも靴下マストです。


        ー ヤマヤ勤務時代、父娘で仲良く歩いて通勤する微笑ましい姿が脳裏に焼き付いているのですが、実際に一緒に仕事をされていかがでしたか?

        みー 父は真面目な性格ですが、物づくりに対する姿勢は想像以上で、正直、経営は大丈夫なのかと心配したこともあります。ですが、年数を重ねてやっと意図に気付くことができたりしてその度にすごいなぁと、今では純粋に尊敬しています。  

        ー また生まれ育った町を離れ、福岡での暮らしに文化の違いなど感じたことはありますか?

        しゅん 元々福岡にルーツがあるということもあり、大きなカルチャーショックはありませんでした。むしろ「ただいま」という気持ちの方が大きかったですね。

        みー 歴史的な理由からか、奈良と通づるところが多く、どちらかというと親近感の方があります。でも関西の言葉が恋しくなることはありますね。

        ー How’s Thatコンセプト「タンスに返ってくるのが待ち遠しくなる靴下」一番のこだわりを教えてください。

        しゅん ローゲージ靴下のこだわりの結晶がHow's Thatですので、挙げればキリがありません!一度履いて頂けるとご理解頂けると自負しています。

         

        ー 今後挑戦したいことなどあれば聞かせてください。

        みー 福岡だけでなく、九州中の人に奈良の靴下の良さを知ってもらいたいです。さらに奈良の技術と九州の素材を組み合わせるといったような地域をまたいだことがしたいですね。福岡で工場見学ができるような基地も作ってみたいし、、やってみたいことはたくさんあります。

        しゅん 欧米進出も常に見据えています。さらに靴下を祖業とし軸を起きつつ、好奇心の赴くままに靴下以外の活動の幅も拡げていきたいと思います。


        ー あなたにとって靴下とは?
        しゅん いろいろな事に目を向けてきたつもりですが、地場産業の靴下が真っ先に思い付く生涯の仕事にしたいアイテムでした。一蓮托生の関係だと思っています

        みー ホームみたいなものでしょうか。靴下はいつでも帰ることのできる場所、みたいな。生き方を迷ってしまっても、私たちには靴下がある。いつでも戻ることのできる、そして受け入れてくれる安心感があります。


         こちらのシリーズは針数56本の古い日本製の編み機でゆっくり時間をかけて編んでます。

         

        あとがき

        特別編、いかがでしたでしょうか。
        How’s Thatは「これ、どう?」という意味。
        ようやく糸季でも「これ、どう?」言える日が近づいてきました。ワクワクです。
        個人的にもゲットしたいなと思っているカラフルな撚糸が特徴のオリジナル感あふれる靴下、
        サイズ展開もさまざまご用意いただきますのでこの機会に是非お手にとってご覧ください。
        紹介しました実店舗は福岡の中心地から少し足を伸ばした立地のようですので、
        勇気を振り絞って?是非訪れてみてください。足だけでなく心まで奪われる靴下があるようです。
        SNSの文中に必ず掲載されているご夫妻それぞれのお茶目なひとことコメント発信も楽しいので是非ご注目くださいね。

        次回は生産現場の連載に戻り、まだまだあるその後のアレコレを追っていきます。どうぞお楽しみに!
         
        企画・構成/ 清瀬  表題/ 藤原 編集/熊谷

        #6

        機楽〜はたらく #6 靴下仕上セット加工

        編み機とハタラク職人のモノ語り 
        連載企画 第六回目、

        奈良県・広陵町にある靴下工場「ヤマヤ株式会社」
        生産現場から、靴下仕上セット加工の職人にインタビュー。

        靴下によっては縫製始末が必要な箇所や刺繍を施したり、スベリ止めのプリントなど、様々な業者さまに委託しています。
        今回は靴下工程では欠かせない仕上げ加工について。

        糸季で販売しているオーガニックコットン、ヤク、ウールやリネンなどの肌にあたるメインで使用する天然繊維のことを表糸と呼んでおり、
その逆の裏糸とは強度やフィット性を高めるための伸縮性のある糸のことで、「ナイロン」「ポリウレタン」などの化学繊維が裏糸に属します。
裏糸はポリウレタンを芯糸にナイロンがカバーリングされています。
熱と蒸気を加えることで糸が縮んで形が整い、伸縮性が生まれ、ほどよく伸び縮みする履き心地の良い靴下に仕上げるため形を整える裏糸はまさに縁の下の力持ち。非常に重要な役割を担っています。裏糸が本領発揮させるための仕上げ工程のことを「セット」と呼んでいます。
ジュラルミン製足型金板に靴下をはめ込み、蒸気と圧力で靴下の形を整え洗濯後の収縮を少なくなくしたり、形を整え仕上げていきます。20枚(10足)=1デカと呼ぶ単位をひとまとめに括り、持ち込みます。この機械には1周につき1デカ×5セット。周回させながらセットしていきます。

        ※この工程では乾燥機にいれておりますが、製品になった靴下はアイロンや乾燥機はお控えください。

        ▼セット工程の様子


        型板に靴下を履かせるのもスピード勝負。熟練の技が必要な工程です。


        実はこのセット機、年季が入っているように見えますが、業界内ではまだ新しい方なんだとか。
        日本製の機械、毎日ご機嫌をうかがいながら作業を進められるそうです。

        靴下のサイズや形状によって型板も様々です。



        それでは平日のほぼ毎日、セットをお願いしている職人にインタビュー。



        ー 製品によって蒸気の当て方など違いはありますか?
         
          はい。靴下の素材や仕上がりの風合いよって、乾燥させる時間と蒸気の圧力も調節しています。

        ー ヤマヤで製造した靴下はどのぐらいのペースでセットされますか?
          
          平日はほぼ毎日、日中の気温が高まる時間帯での作業は控えるため、早朝5時半から4、5時間ほど。日によって異なりますが繁忙期は月換算では12,000〜13,000足ぐらいのペースです。

        ー 靴下業界で60年、長く続けてこられた秘訣などがあれば教えて下さい。
          
          10年ほど前に大病を患い、休業を余儀なくされ、廃業を考えたときもありましたが、ヤマヤの社長さんや従業員さんの心遣いがあり、現在までやってこれました。専務さんが頑張っている様子を見て刺激をもらっています!秋・冬の商品の生産に向け6月〜10月にかけてが繁忙期。真夏の繁忙期はまさに体力勝負です。繁忙期には体力温存のため控えていますが、友人たちとのゴルフを楽しみにしていています。コースを回ると緑の中で自然と歩くことが出来、鍛えられるかな。プレイ後の入浴やビールがまた格別!

        ー あなたにとって靴下とは?
          「されど靴下。」かな。
         長崎県雲仙普賢岳麓の農家で育ち、8人兄弟の5番目。兄たちを亡くし実質跡取り候補ではありましたが家業から離れたい一心で、父の反対を押し切り集団就職で奈良へ。学生時代はテニス部に所属していて周りは靴下を履いていたけれど、我が家の暮らしは裕福ではなかったので靴下は履いたりすることはなかった、そんな私が導かれるようにこんなに長く靴下業界に身を置くとは。どこか惹かれるところがあったんでしょうね。(笑) 人生が変わりました。

        故郷を離れて4年ほどは一度も帰郷することがなかったそう。
        集団就職先では靴下編み機の調整やセット工程に携わり、その後はお人柄が功を奏し周りの働きかけがあり、靴下セット工場を設立されました。
        20年ほど前までには奈良県内に工場があったベビーアパレルメーカーの靴下をメインに、有名企業の靴下セットを多く請け負っていたそう。
        1日1,200足以上、当時はセット機械2台、1台につき3〜4名で付きっきりで24時間フル稼働していたときもあったとか。
        広陵町ではかつては60軒ほどあったセット工場も現在は12軒ほど。世代交代をされているところもあるようですが、機械が入手困難ということもあり廃業される同業者が相次いでいるそうです。


        あとがき

        靴下仕上セット加工の職人のお話、いかがでしたでしょうか。
        この製造過程はまさに蒸し風呂状態。スピードと体力勝負の立ち仕事、セット工場も機械が希少になってきており、大変貴重な存在。
        取材時は真夏。暑くなるからとお気遣いいただき、朝の早い時間帯に伺うことができました。
        「もう体力ないからな〜。」と弱音を吐かれるひとコマも。そうは仰ってもご年齢を感じさせない背筋。
        蒸し風呂状態で日頃お勤めされていることもあってか、お肌は艷やか。まだまだ頑張っていただきたいです。


        広陵町の午前中に煙が立ち上がっているところはこのようなセット工程をされている工場さんかもしれませんので近辺を通られる機会があれば、そんな街の様子にも是非ご注目ください。

        次回、生産現場はいよいよ最終工程です。靴下についているアレは何故?という疑問の紐を解いていきます。どうぞお楽しみに!
         
        企画・構成/ 清瀬  表題/ 藤原 編集/熊谷

        #7

        機楽〜はたらく #7 最終工程 検査・ペアリング加工仕上げ

        編み機とハタラク職人のモノ語り 

        連載企画 第七回目、

        奈良県・広陵町にある靴下工場「ヤマヤ株式会社」

        生産現場から、最終工程 ペアリング・検針・包装の従業員にインタビュー。

        さて、いきなりですが問題です。

        みなさま、写真のコレ、何と呼ぶのかご存知でしょうか?

         

         

        答えは「ソッパス」「パッカー」など 呼び名は様々。

        購入した靴下の付属品として一度は手にされたことも多いのではないでしょうか。

        面倒な厄介者。毛嫌いされている方もいらっしゃるかと、、。

        ヤマヤでは環境保護の観点からこのような付属品をなるべく減らすよう努めていますが、実はこの付属品にはワケがあるのです。

        Hoffmannのようなミシン糸を使ってタグを付ける際、タグを縫い合わせた流れでそのまま検針機へと進んでいきます。

        ベルトコンベアでの流れ作業時や商品の輸送時に靴下の形状が崩れないようにするためです。


        <タグを縫い付けるミシン>

        メーカー:日新電子工業株式会社

         

        <検針機>

        メーカー:株式会社タカトリ


        2台ともなかなかの古株。
        1.0φサイズの鉄が入ったアクリル板を通し、検針機がきちんと反応をするかをまず確認します。

        動作確認が完了後には順次検針機に通し、細かな金属片などが混入していないかすべての商品で確認していきます。

        ミシンの針が飛んでしまう非常事態には加工場従業員総出で捜索をします。(フォローするようですが滅多にそのようなことは起こりません。)

        左右1枚1枚を合わせていくペアリング工程。微妙な違いを見極めつつ、ペアを合わせていきます。

        特にガラボウは個体差が生じやすい商品。なかなかの曲者です。一枚一枚の表情をペアにしていくには時間が必要です。

        細かな作業ではルーペが必須。補修のお手伝いをしたことがあるのですが、オペをするドクターの気分でした。

        すごく神経を使うので、肩コリなどの悩みがつきものなのです、、。

        自社製品やOEMも含め最終工程のスケジュール調整や加工チーム従業員への担当割り振りなどを担うチームリーダーにインタビュー

         ー 細かい作業工程、補修でご苦労されることはどんな時でしょうか。

        リーダー 多品種の靴下に合わせた作業をする事です。様々な装飾があり、作業切替の回転も早く、「急いでいても丁寧に亅が必要です。補修に関しては小さな編み目を追いかけていくので集中力が必要、作業後は目が疲れます。しばらく外を眺めましょうと言いたくなるぐらいです。

        ―  自社製品の他、OEM事業の納品時期に合わせ加工チームの担当割やスケジュール管理、ご自身で工夫していることなどがあれば教えて下さい。

        リーダー 工場といえば流れ作業のイメージありませんか?加工チームは現在11人がそれぞれ違う商品を検品から梱包まで進めています。種類にもよりますが、1人あたり1日約80足〜150足です。前工程の多さによって上がってくるタイミングも、気にする箇所も、装飾の数も、数量も様々です。納品時期に合わせて、協力して1つの商品に取りかかることもあります。

        皆さんの進捗と納品時期までの作業日数、OEMは先1ヶ月半の日程、自社製品は在庫と季節とを日々気にかけていますが、なかなか難しく、協力をお願いする方が多いです。作業の都合上、2つの商品を交互にせざるを得ない場合もあり、1人の方に負担が重ならないように気をつけています。

        ― 今までで忘れられない、思い入れのある靴下があれば教えてください。

        リーダー 検品加工なら、ORGANICGARDENのガラ紡ソックスです。検品も糸の太さが違うので、1枚1枚の表情を見て、触って、合わせて1足にするのにこんなに悩むと思っていませんでした。

        個人的なお気に入りはHoffmannのゴムなしプレーンソックスです。私が初めて足底につける転写とミシン加工をした商品でもあります。

        ― あなたにとって靴下とは

        リーダー 年間通して裸足好きな私にとっては靴を履く為にいる物、すぐ脱ぐ物という感覚でした。入社してからは履き心地を選んで、楽しむ物になりました。

         

        あとがき

        靴下の最終工程 ペアリング・検針・包装の従業員にインタビュー。お話、いかがでしたでしょうか。

        靴下の種類も様々で糸の飛び出しや、糸混じりの確認など、前回ご紹介した傷見同様、一枚一枚の手作業で人の目と手が頼りです。

        〜タグ付け動画撮影時のこぼれ話〜
        滑り止めつきのソックス且つ足底パイルなのでちょっぴり苦戦、商品によって違ってくるそうです。

        次回、商品企画についてデザイナーにインタビューしていきます。どうぞお楽しみに!

         

        企画・構成/ 清瀬  表題/ 藤原 編集/熊谷

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TEL&FAX 0742-77-0722
        
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